山田太一 オフィシャルホームページ
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1.山田太一って奴は・・・。
2.教習所所長の責任感。
3.奇跡のイベント。
4.痴漢逮捕劇。
深夜の東京で起こる犯罪に偶然出くわした太一。
果たして太一はどういった行動を取ったのか!?
痴漢逮捕劇
まだ、東京に来て一年がたたない頃、最初に住んでいた横浜から東京に通うようにして活動をしていた頃。深夜のラジオ放送のスタッフとして某FM放送局に足を運ぶようになっていた。
その頃の足は相方と全国を飛び回っていたボロボロのディーゼル車。
実家で廃車にするのを引き取った、いつ壊れてもおかしくない車。
その車で、横浜から東京に来て深夜の電車がなくなってもいい時間まで動けるようにしていた。
その番組が終わるのが夜中の3時。今では24時間営業が当たり前の世の中でも、当時は渋谷の駅前でも、今ほどではない。今でも有名なアミューズメントビルが朝の4時くらいまで営業しているのが、ありがたい時代だ。そんな夜中の3時過ぎに渋谷駅に差し掛かった時にその事件はおきた。
宮益坂の少し手前、まもなく渋谷駅と言う山手通り沿い。その有名なアミューズメントビルの少し手前である。信号で停まっていた太一の車に聞こえてきた女性の声。
それは、普段の街中では到底聞けないような声だ。ドラマや映画の中では良く聞くが、いくら深夜だからといっても、この渋谷駅のすぐ側で聞くような声ではない。
言葉の内容は 『やめてよー!』
だった。
この内容ならそんなに不思議な事ではないが、その剣幕は普通じゃなかった。
信号で停まったまま車の中から歩道を見ていると、サラリーマン風の男とOLが揉め合っていた。
『なんだ、痴話ゲンカか・・・。』
そう思った太一は一旦信号に眼をやった。
まだ赤のままの信号を軽く確認して再びそのカップルに目をやった。
それは、痴話ゲンカだと思っても人間の好奇心もあり、そして消えることなく騒いでいる声がそうさせた。
すると、女性がヒールを脱いで、かかとの部分を男性に向かってブンブン振り回していた。
それを見てハッとした。
これはただの痴話ゲンカではない。そう思った太一はすぐに信号が青に変わったのを期に車を歩道に寄せて止めた。
すかさず降りて声をかけた。
『大丈夫ですか?』
あくまでもおせっかいですが、一応心配してますけど・・・的なニュアンスを逸脱しないバランスで声をかけた。そりゃそうだ。いくらヒールでブンブンやっていると言っても痴話ゲンカの可能性もまだあるわけだ。そう思って恐る恐る近づくと返ってきた言葉はまさにそれだった。
『すいません!この人痴漢なんです!捕まえてください!!』
その言葉を聞くのが早いか走り出すのが早かったかは定かではないが、その男がダッシュした。
逃げ出したのだ。状況を把握するのは半秒もかからなかった。その男のダッシュに遅れること半秒で自分もダッシュした。
しかし、恐らく酔っ払いであろうその男もさすがに捕まってはいけない事を察知したのであろう、逃げ足は異常に早かった。宮益坂の手前を左に入り坂を上りながら郵便局の裏側辺りから宮益坂の中腹にでた。
見失った・・・。
不覚にも少し遅れて宮益す座下に出た太一の視界からその男が消えたのだ。いかん、そんなことはない、この一瞬でこの見える範囲から遠ざかれるはずがない。その分析をもってもう一度ゆっくりと見回してみた。
・・・いた。
電話ボックスの(この当時は結構な感覚で電話ボックスがまだあった)横の植え込みの高さに消えるように身をすくめ電話ボックスの陰に隠れていた。その背中が、黒いスーツだとはっきりわかる。
確かにその周辺で空いているお店は少ないが、真っ暗ではない。当然街灯もあれば電話ボックスの明かりもある。いくらこの時代でも東京のど真ん中で真っ暗はない。
その薄明かりに照らし出される丸まった背中は全く運動していない人間が人生で最も全力で走った事を語っている。大きく呼吸をしている様が電話ボックスのガラス越しにもわかる。
ここで、又しても必死の逃走をされるとさすがに体力に自信があってもキツイ。
そのまま見つかっていないと相手に思わせるよう、静かに近づいていった。

すぐ後ろまで近づいて一気に背中から右手を取り後ろに回し首根っこを捕まえ立たせた。
男はすでに体力の限界だったのか抵抗することなく捕まった。そのまま背中に回した右手を押さえながら前に押して歩かせ、首からスーツとシャツを合わせて握り宮益坂を降りていった。
さっきの現場に戻ると、ヒールを履きなおして待っていた女性。二人を見るとひるむことなく近寄ってきた。『捕まえましたがどうします?警察に行きますか?』
『はい、もちろん行きます』強い口調にちょっと安心した。
ここまでやっても、警察に行くと言う話になった途端に尻込みをする人が多い。
それでは全くの走り損だ。いや、損はしていない。その男に少なからず『しまった・・・』と言う反省を促す事は出来たであろう。しかし、それでは犯罪の抑制にはならないのではないかとも思う。
とにかくこの女性は一緒に警察に行っても良いと言うのだ。
その男を抑えた格好のまま踵を返しハチ公前の交番に歩いていった。
立っていた警察官にその男を突き出して『痴漢を逮捕しました。こちらの方が被害者です。』
そう言って僕の後ろを着いてきた女性の方に顎を向けた。
一瞬で状況を把握した警官は奥に人を呼びに行った。

そこからは警察での出来事だが車を一旦取りに行ってパトカーに先導されて渋谷署に入り別々の部屋で調書を取られる訳だ。

ここで一つ。

現行犯逮捕は一般人でもできると言うこと。だから、現行犯逮捕した本人が調書を作成しなければいけないのだ。すでに4時を回ってる時間から、4時間ほど拘束され、そのお礼に東京都から現金で1万円が支給された。
その代わり横浜新道を帰るころは朝の通勤ラッシュで大渋滞の中眠い目を擦りながら帰る事になったのは言うまでも無い。

ただ、朝方に渋谷署を解放されて帰る時、同じく調書を取られていた女性のお迎えだろう、婚約者だと言う男がお礼を言いに来てくれた。少し遅れてロビーに来た女性が深々と頭を下げてお礼を言いに来てくれた。ただ『お幸せに』としかいえなかった太一でした。
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